近寄ってくる女はどれも同じに見えた。何か命令すれば何でも言う事聞いたし、穴に突っ込めば腰を振って喜んだ。 飽きて捨てようとしたら、どの女も同じ行動に出る。「ベルフェゴール様、私を殺して下さい」 捨てられるなら殺された方がマシ、だって。ばっかじゃねーの?
だけどは違った。オレは他のどんな物よりもを大切にしてきたし、沢山可愛がってやった。

全てが順調なはずだったんだ。

が悪いんだからな?オレの傍から離れるなんて言うからさ」

腕を縛られ宙吊りにされたが、オレの前で苦しそうに悶えている。無論、彼女のそんな姿を見ても助けてやろうと思わないのは、宙吊りにした張本人がオレだからだ。白い肌にナイフを滑らせれば対照的な赤色が綺麗な線を描いていく。ナイフの先端部分に彼女の血が伝って、跳ねるように床に落ちた。

「今謝れば許してやるよ?オレだって、本当はにこんなことしたくないし」

は相変わらず黙ったままだった。何で何も言わないんだよ?怯えたような目で、オレを見るなよ。なぁ、いつからこんな風になったんだ?オレはお前が欲しくて溜まらないのに、何で離れようとするんだよ?
ナイフを顔に突きつけたまま、服の上から彼女の乳房を軽く舐め上げた。「やっ…」今までだんまりだったの口から、可愛らしい声が漏れる。やべーこれ、興奮するわ。必死に口を紡ぐ彼女の唇を無理やり舌でこじあけ、キスをした。はオレのもの。お前がオレから離れることなんで出来るわけがないんだ。

「な、解っただろ?お前はオレが欲しくて溜まらないんだよ」
「違…」
「此処だってこんなにぐしょぐしょじゃん」

下着の上から割れ目をなぞれば、ドロドロとした液体がオレの指に纏わりついた。 「…お願い、ベルやめて…」ぎゅっと瞑った目から零れ落ちた涙が、ナイフで描かれた線を伝った。透明な液体と、紅い液体が混じり合う。オレはそれを拭き取るように、綺麗に舐め上げた。

「…好きな人が、出来たの」

声を絞り出すように、小さな声では言った。
好きな人が出来た…?オレ以外に?何それ面白くねえ冗談。

「ふーん。で、誰なんだよ?オレがそいつ殺してやるからさ」
「……」
「言えないの?じゃあの周りに居る奴、みーんな殺しちゃうよ?」
「……、なの…」
「え?」

聞き間違いだと思った、否、聞き間違いにしたかった。オレは王子だから、誰を殺そうと誰にも文句は言われないし、何をやっても許されてきた。今回のもそうだ、もし相手がオレの知らない奴で、を奪おうとしているのなら、今すぐにだって殺してやった。

だけど、ボスに立て付く勇気は、オレには持てなかった。

「ベル…ごめんなさい…」
「…何悲劇のヒロインぶってんの?もしかして、遊ばれてるの気づいてなかった?」
「……」
「くだらねーお姫様ごっこは終わりだ」

ドサッ―彼女を釣っていたロープをナイフで切った途端、鈍い音と共に床へ倒れこんだ。そう、遊びはもうお終いだ。飽きたから捨ててやるよ。退屈凌ぎにもなんねーし。
オレは床に手を突きながら泣き崩れているを、見下げるようにして言った。

「楽しかったよ、





失った欠片


こんな終わりが来るなんて、思ってもみなかったんだ。


2007/5/15