学校へ行ったら、彼の姿が無かった。学校一目立つ人と言っても過言ではない、風紀委員長の彼。心配になって草壁さんに聞いてみたら、どうやら彼は風邪をこじらせて入院してしまっているらしい。あの雲雀くんが?初めは信じられなかったけど、雲雀くんが入院している病院の住所と部屋のナンバーを聞くところによると、どうやらこの情報は確からしい。
ホームルームが終わると私は勢いよく教室を飛び出した。一刻も早く、彼のところへ行きたかったからだ。会いたい一心で、人はこんなにも頑張れるものだと改めて実感した。
病室の前に貼ってあるプレートに"雲雀恭弥"と書かれてあるのを確認すると、コンコンとドアをノックした。ドキドキドキ、胸の高まりが止まない。なんで私、こんなに緊張してるんだろう?「どうぞ」そう声が聞こえて、私は静かにドアを開けた。

「雲雀くん」
「やあ、来てくれたの」
「うん。学校行っても居なかったからびっくりした」

寝ているかと思えば雲雀くんはベットに腰を書けながら、難しそうな本を読んでいた。(せっかく寝顔が見れると思ったのに!)元気そうな彼の顔を見て安心した私は、手を塞いでいる学校の鞄をベットに持たれ掛けさせるように置いた。お見舞いで持ってきたお花を花瓶に飾ると、真っ白で殺風景だったこの部屋が綺麗に彩られるようだった。満足して暫くそれを眺めていると、今までだんまりだった雲雀くんが口を開いた。

、座りなよ」
「え?」

そう言われて部屋中を見回してみたけど座れそうなところなんて一つも見当たらなくて、ひょっとして床に跪けって事なのだろうか(彼なら言いかねない)、そう思った私は床を見つめながら、つい引きつった顔をしてしまった。

「そうじゃなくて、ここ」
「あ、そっか!…って、ええ!?」

雲雀くんが指差したのはベットの上、つまり彼のすぐ隣。待って待って!そんなところに座ったら心臓が張り裂けて死んじゃう!

「や、やっぱり立ってるよ」
「何で?」
「…えっと、ほら…雲雀くんの邪魔になるといけないから」

雲雀くんの今にも咬み殺しそうな目付きをあまり見ないようにして(絶対怒ってる!)、早く帰ろうと思った私は素早く鞄を持ち上げた。が、その腕を引っ張られて、あっという間にベットの上へと倒されてしまう。抵抗しようと思っても両腕をしっかりと固定されてる為身動き出来なかった。目の前には、不機嫌そうな雲雀くんの顔。

「もう帰るの?今来たばかりじゃない」
「えーっと、宿題が…」
「そんなの10分あれば出来るよ」
「あ、用事があって」
「僕の見舞いよりも大事なことなの?」
「え…と」

次の言葉を言おうとした瞬間、雲雀くんの唇で口を塞がれた為それも無駄な抵抗となってしまった。初めて感じた柔らかくて、温かくて、心地良い感覚。頭がどうにかなりそうだ。今…私、本当に雲雀くんとキスしてるの?
「やっと黙った」唇が離れると雲雀くんは勝ち誇ったような笑みを浮かべて言った。キスのせいで体中の力が抜けて何も考えられなくなった私は、言葉すらも出せなくてただ雲雀くんの瞳を見つめることしか出来なかった。

「君が居ないと退屈なんだ」

そう言って微かに笑うと雲雀くんはもう一度、キスをした。




身勝手な王子様




2006/9/22