「う゛お゛ぉい!てめぇいい加減にしろぉ!」
隣で眠るスクアーロの邪魔をしないように大人しく彼の髪で三つ編みを作って遊んでいたのに、それが癇に障ったのかとうとうキレられてしまった。相変わらずの大声にいつ聞いても驚いてしまう。隣に居るんだから、そんなに大きな声出さなくても十分聞こえるのに。
「だって三つ編みしたかったんだもん」
「だからそれがうっとぉしいって言ってんだぁ!てめぇ部屋追い出すぞ」
「えー!ヤダ!大人しくしてるから!!」
そう言って泣きそうな顔を見せると、彼は大抵許してくれるのだ。私ったら、段々彼の扱いに慣れてきた?涙に騙されるなんて、スクアーロもまだまだ子供よね。
「今度邪魔したら追い出すからなぁ!」
「はーい」
退屈だから寝顔でも観察してようかと思ったのに、スクアーロは反対方向を向いてしまって、表情すらも伺えなかった。
仕方なく私はぴたりと彼の背中にくっつき、大人しく寝ようと試しに目を閉じてみた。
……なーんて、やっぱりそんなのつまんない!せっかく久しぶりに一緒に居られるんだから、もっといちゃいちゃしたい!
「ねぇスクアーロ。もう寝た?」
「……」
「うそ、本当に寝ちゃったの?」
「……」
「もう!つまんなーい!」
彼が寝てしまったのではもういちゃいちゃどころでは無い。あーあ。次に一緒に居られるのはいつかなー?お互いに任務があるため、二人の休みが合う日なんてほんの数えるほどだった。
その貴重な一日を、この男は何とも思っていないのかしら。
「そういえばこの前シャンプーが無くなったって騒いでたじゃない?あれね、ベルのせいにしてたけど実は私が使ってたんだよね。香りで気づくと思ったんだけど、スクアーロって案外鈍感?」
「あ、あとわけもわからずボスに殴られた事あったじゃない?あ、いつもか。あれね、私が冗談で、スクアーロに無理やり襲われそうになったってボスに言っちゃったの。そしたら凄く怒っちゃって。ごめんね、悪気は無かったんだよ。だってあんなに怒ると思わなかったんだもん」
「ねぇスクアーロ。私がどれだけあなたのこと好きか知ってる?どうせ興味ないかもしれないけど、わたしスクアーロのこと大好きだからね。
世界で一番!あ、宇宙で一番、かな」
散々喋り捲った後で、だんだんと思考回路が途切れていくのを感じると、私はいつの間にか目を閉じていた。
その朧げな意識の中で、一瞬、夢なのか現実なのか混乱した。
背を向けていたはずの彼が此方に寝返ったと思えば、包み込むようにして抱きしめられ、そしてそっと耳元で囁くのだ。
「好きだぞぉ、」
ひょっとしたら彼も寝ぼけていたのかもしれない。それでも構わないと思った。だって、夢の中でも現実でも、私の事を想ってくれてるってことでしょ?
彼の腕に抱かれながら、私は最高に幸せな眠りにつく。
極上の幸せ
2007/9/16