シャープペンを真っ白な紙の上に走らせる。来週提出のレポートを今日中に終わらせようと、私は一日学校の図書館に引き篭もることにした。
試験前になると人で溢れ返る図書館も今日は閑散としていて、集中して取り組む事が出来た。
なんてのは、初めだけ。
どうやら日当たりの良い窓際の席を選んだのがいけなかったみたいだ。急に襲ってきた眠気はシャーペンを手の甲に刺しても、思い切り頭を振っても取れる事が無くて
、無意識の内に身体を机にうつ伏せていた。今なら気持ちよく寝られそう―重たくなった目蓋をゆっくりと閉じて、私は眠りの中へと入って行った。
「
」
今までどんな事をしても眠気が取れる事なんて無かったのに、名前を呼ばれただけで一瞬で目が覚めた。
聞き覚えのある声…恐る恐る目を開けてみれば前には信じられない人が居て、私と同じようにうつ伏せて寝ている竜崎と目が合った。
「え…、りゅ」
思わず大声を挙げてしまいそうだったが、竜崎の人差し指が私の唇に当たったため、何とかそれ押し留めた。
彼は小さく笑いながらも、のん気に「おはようございます」なんて言っている。寝顔を見られたかと思うと恥ずかしくて、身体の体温が一気に上昇した。
いきなりの彼の出現で頭がこんがらがっていた。竜崎は全くと言って良いほど大学に来ない上、今月は忙しくて会えないと言われていた。
目覚めてはいるものの未だ夢のような感覚で、私にはどうしてもそれが現実のものだと言う確信が持てなかった。
「夢…じゃ無いよね?」
「試してみますか?」
その瞬間ぐいっと顎を引っ張られ、キスをされた。
それは確かに自分の知っている感触で、朧げだった意識も霧が晴れていくように確かな物に変わって行った。
「どうでした?」
「ど、どうでしたも何も…此処、図書室だよ!?」
「大丈夫です。今日は人も少ないし、丁度本棚で死角になって見られる心配もありません」
「だ、だからって…」
心臓が止まるかと思った。早鐘のように脈打つ心臓は、一向に静まる気配が無い。それなのに竜崎は平然として笑っていた。
「私が居ないとレポートもろくに出来ないんですか?」
「そ、そんなことないよ!少し寝たらまた頑張ろうと思ってたの」
「1時間だけなら待ってあげます。それまでに終わらせて下さいね」
「えー!」
まだ70%くらい残っているレポートをどうやって一時間で片付けると言うのだろう。考えても思いつかなかったので私は取りあえず
シャーペンを持ち直し、先程のレポートの続きを急いで書き上げていった。
タイムリミットは一時間
2007/10/31