カリカリカリ…部屋に響くのは、ノートの上を走る鉛筆の音。窓の外から聞こえる子供の声、ボールの弾む音。それに、ドキドキドキ―自分の心臓の脈打つ音。
いつもパズルばかりやっているニアが珍しく勉強を教えてくれるというので来たら、こんな状況になってしまった。ドアは閉まって密室状態。この部屋には今、私とニアの二人だけしか居ない。ニアは私の隣に座り、じっと此方を見ながら、片手で自分の髪の毛を弄んでいた。


「手、止まってますよ」


いきなりニアが喋るものだから、ドキリと心臓が跳ね上がった。慌てて鉛筆を動かしてみるけど、結局答えが出なくてまた振り出しに戻ってしまう。「解らない」の前に「考えれない」から嫌になってしまう。こんな至近距離で、しかも好きな人に見つめられていたら誰だって集中できるはずが無い。さっきから書いては消し、の繰り返しで、真っ白だったノートも黒ずんで汚くなってしまった。


「ですから、ここはこう…」
「……」
「… 。聞いてますか?」
「え?う、うん」


つい、ニアの綺麗な手に見とれていたら、せっかく教えてもらった解法も右から左へと抜けていってしまった。それを見たニアが呆れ返ってはぁ、と溜息をついている。全くと言っていいほど集中出来ない、ニアには迷惑をかけてばかり…これなら、メロに教えてもらった方がよかったのかな。


。やる気が無いのなら出ていってもらっても構いません」
「違っ…ごめんなさい…」
「……では、今度間違えたら、その度にペナルティを与えます」
「ペナルティ?」
「はい。それなら出来ますね?」


ニアの言うペナルティが何なのか気になったが、とりあえず喜ぶような事ではないのは確かだ。ようやく本気モードになった私は、鉛筆を持つ手に力を込め、勢い良く問題を解き始めた。
一問目、二問目、三問目…そこまでは何とか順調に解けたけど、苦手な証明問題に来たところで詰まってしまった。そういえばこの問題、さっきニアが解き方を教えてくれてた問題と似てるような…取り敢えず答えを書いてはみるものの、全く自信が持てなかった。恐る恐るニアの顔を見れば、案の定、ニヤリとした笑みを浮かべていた。


「…やっぱり違ってる?」
「惜しいですね。でも間違いは間違いです」
「えー…わかった、ペナルティ受けるよ…」


いったい何をするつもりなんだろう?そんな風にびくびくしていたら、ニアの白くて細い手がスッと伸びてきて、私の顎に触れた。そしてくいっと彼の顔の近くまで引き寄せられ、ニアの透き通るような瞳がじっと私の目を見つめてきた。こんなに至近距離で見るのは初めてで、心臓が飛び出してしまいそうなくらい脈打っていた。まるで、何もかも見透かしてるような目―そんな目で見つめられてる私は、金縛りにあったみたいに動く事が出来なかった。


「…んっ…」


彼の唇が、そっと触れる。あまりの心地よさに、何も考えられなくなった。初めは触れるだけの軽いキスだったけど、段々深いものに変わり、ニアの舌が私の口内を弄んだ。逃げようとすればすぐに捕らえられ、舌と舌が絡まりあう感覚に思わず酔い痴れてしまう。


「…はぁっ…」
「次は…どうしましょうか?」


耳元でニアの声が響いて、びくっと身体が反応した。駄目だ…このままだとどうにかなっちゃいそうだ。ツ―と彼の人差し指が背中をなぞり、ブラのところで手を止め、そのままプチンとホックを外された。少し圧迫されていた其処が、瞬時に開放感で満たされる。


「やっ…ニアッ」
「本当は触れて欲しかったくせに」
「ち、違っ……きゃあっ!」


ドッターン!
ニアに攻められて端に追いやられた私は、とうとう椅子からずり落ちてしまった。激しい音と共にお尻に激痛が走る。


「いったぁー…」
、すいません…つい感情が抑えきれなくて」
「ううん…大丈夫」
「手を」


そう言って、ニアがすっと手を差し出してきた。だけどその手に捕まろうとした瞬間、ニアの身体が圧し掛かってきてそのまま床へと押し倒された。身動きしようにも、身体を固定されてるためどうしようもない。


「ちょっと、ニア…!?」
「ペナルティです。間違えたあなたが悪いんですよ?」
「えっちょ、待っ…」


私の必死の抵抗も唇で遮られ、身体を這う彼の手によって、起用に服のボタンが外されていった。ニアの勢いはどうやら止まりそうにない。やっぱりメロに教えてもらうんだったな…と、少し後悔しながらも、私はニアに身を委ねるのだった。







P e n a l t y


2006/6/05