しつこく鳴り響くインターホンの音。人が訪れてくるには、遅すぎる時間帯だ。無視しようと思ったがあまりにしつこく鳴るので仕方なくドアを開けたら、其処には数年前に出て行ったはずの男が立っていた。


「会いたかったよハニー!」
「は…マット?」
「おう、ただいま!」
「ただいまじゃないでしょ!?…何で今更帰ってくるの?」
「おいおい、それが久しぶりに会った彼氏に言うセリフか?」
「彼氏じゃないわ、バカ」


この男はいったい何を考えているんだろう。もし私が他の男の人と同棲してたらどうするつもりだったんだ?不審者だと思った彼はマットを刺し殺すかもしれない。警察に通報することだってあるかもしれない。相変わらず、何も考えてないところは変わってないみたいだ。マットらしいというか…

「とりあえずさ、中に入れてくんない?」そうマットに言われて、暫く魂が別世界に行っていた私はハッと我に返り、彼を中に入れてあげた。ガチャン、扉が力強く閉まったのに驚いて、思わずびくりと肩を震わせる。夜中なんだから静かに閉めてよ!と言おうと思って振り返ろうとしたら、そのまま身体を壁に押し遣られて私は身動きが取れなくなった。

視界一杯に写る、彼の顔。ゴーグルの奥の瞳から、なかなか目が離せなかった。


「待たせて悪かった」


絶対泣いてやるもんか、と思ってたのに、彼があまりに弱々しく言うものだから、堪えきれなくなった涙はぼろぼろと零れ落ちた。








強い眼差し い声