私はいつもの様に、パズルを抱えながら自分の部屋へと入った。その瞬間、普段と様子が違う事に気が付く。自分が好意を寄せている女の子が、部屋の中心で小さな寝息を立てながら、横たわっていたからだ。
ドキドキドキ―速まる心臓を手で押さえながら、ゆっくりと彼女に近づく。もしかしたら初めてこんなに近くで見たのかもしれない。彼女の肌がこんなにも白かったとか、睫が長いだとか、新たな発見が次々と出てきた。
「こんな所で寝ていたら、風邪引きますよ」
「んー…もうちょっとっ…」
寝惚けているのだろうか、彼女は甘えたような声で私の腕をぎゅ、と掴んだ。
そしてそのまま腕を引っ張られ、気づいたら彼女の柔らかい身体に包まれていた。
ひょっとしたら、抱き枕と勘違いしてるんじゃないだろうか―そんな思いが過ぎる。
「あのっ…」
「……」
それから何度話しかけても、彼女から返事が返って来る事は無かった。無理やり起こしてしまうのも気が引けたので、仕方なくそのままで居る事にした。
彼女の吐息がふっと顔にかかる。胸の膨らみが、身体に当たる。簡単にキスが出来そうな、距離。
こんな状況で、欲情しない人間なんか居るのだろうか―。
私はギリギリの欲情を抑えながらも、触れるだけのキスを、彼女にした。
「ん…」
いきなり発せられた声にビクッと身体が反応する。彼女にバレてしまったらもうお終いだと思った。
だが、眠たそうな目を擦り、パチパチ、と目を瞬かせるところを見ると、どうやらまだ私の存在には気づいてないようだ。思わず安堵の息が漏れる。何回か瞬きをした後で、やっと私に気づいたのか彼女は驚きの声をあげた。
「わっニア!びっくりしたぁ!」
「びっくりしたのは私ですよ。早く離して下さい」
「ご、ごめん…!」
パッと手が離れると、私は急いで彼女の身体から離れた。もうきっと、これ以上傍に居たら心臓が破裂してしまいそう
だったから―。私は出来るだけ彼女から離れたところに座り、いつものようにパズルを始めた。
脈はまだ正常には戻っていなかった。
「ニア、一緒にやってもいい?」
猫みたいに傍に近寄る彼女に再び胸をときめかせながらも、私は何も言わず、コクンと首を縦に振った。
暖かな光